訪問介護の開業で失敗する原因とは?失敗しないための対策も解説
高齢化が進む中で介護事業を開業する経営者も増えています。
訪問介護の事業所も年々増加しており、2020年には35,075事業所と居宅サービス事業所の中では最多の事業所数となっています。
しかし訪問介護事業所を開業する人は増えているものの、開業に失敗したり、開業したものの経営に失敗したりするケースも。
今回は訪問介護の事業所を開業するにあたって失敗する原因や、失敗しないための対策を解説します。
訪問介護の開業に失敗する原因とは
訪問介護の開業に失敗する原因は主に下記の2つが挙げられます。
- 開業資金不足
- 人材不足
開業後の経営で失敗する原因は異なるものもあるので別途後述します。まずは開業に失敗する原因から、理由とともに見ていきましょう。
開業資金不足
訪問介護事業所は数が多く、同業者で働き手を取り合うような形になってきています。そのためスタッフを集めるためにプロモーションに力を入れる必要があり、そこで人材紹介会社などを利用することで、さらに費用が嵩む場合もあるでしょう。
また、小規模な会社が訪問介護を開業する場合、予算が少なく銀行から借りれる融資も少ないケースがあります。銀行から借りられる融資が少ないと、総合的に資金が足らず、開業資金不足で開業に失敗してしまう場合もあります。
人材不足
前述のように訪問介護は高齢化が進む世の中の需要に合わせて、事業所の数は増加しています。しかし高齢者は増加しているものの、働き手の数は少子化の影響もあり少なくなっています。
また実際に2018年の60歳以上の介護労働者の割合は21.6%となっており、2014年の17.4%と比較すると徐々に働き手の高齢化が進んでいることがわかるでしょう。
こうした慢性的な人手不足の中で働き手を集めていかなければなりません。もし働き手の人材をうまく集められなければ、要介護者を受け入れられないため、経営が回らず開業や経営が失敗してしまいます。
訪問介護の開業後に経営に失敗する原因
訪問介護の事業所を無事に開業できたものの、うまく経営が続かず事業が失敗してしまったというケースもあります。
開業の場合の原因と同様に、資金繰りや人材不足も当てはまりますが、別の原因として下記の原因があります。
- 働き手不足による利用者不足
- 介護報酬の改定など最新情報についていけなくなった(知識不足)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
働き手不足による利用者不足
働き手が不足することで、訪問介護を利用する利用者自体が少なくなるのも訪問介護の経営が失敗してしまう原因とされています。
そもそも訪問介護を必要とする利用者の数は増加傾向ですが、働き手である訪問介護スタッフの数は少子高齢化の影響から減少しているというのが実情です。
さらに訪問介護は、車や自転車などで移動する移動時間もあるため、多くの利用者を担当する場合、1日の移動時間や移動距離も長くなり、スタッフの身体的な負担も増加してしまいます。
スタッフが働く中で身体的な負担を強く感じてしまうと、離職率も高くなってしまいます。スタッフの定着率が下がることで訪問介護事業所が回らず、新規採用のコストもかかり、経営が失敗してしまうでしょう。
介護報酬の改定など最新情報についていけなくなった(知識不足)
介護報酬は国から介護事業者へ支払われる報酬を指しており、介護報酬改定による介護報酬の引き下げや引き上げは、直接的に事業の収益へと関わってくるでしょう。
直近の2021年の介護報酬改定では、幸い介護報酬が引き下げられることはなく基本報酬は軽微ですが1〜2割程度引き上げられています。
しかし新設の加算や減算などさまざまな変更点もあるので、3年に1度の介護報酬改定の内容を見ながら、運営方針を変えていく必要もあるでしょう。
こうした細かな介護業界の変化に運営方針が追いつけずに、経営がうまくいかなくなったという場合もあります。
訪問介護の開業や経営で失敗しないための対策
訪問介護の開業や経営で失敗しないための対策は下記の3つです。
- 事前に開業の流れや必要な資金・人材を把握する
- プロモーション方法や競合リサーチを行う
- 介護業界への知識を深める
それぞれ理由も合わせて見ていきます。
事前に開業の流れや必要な資金・人材を把握する
事前に訪問介護の開業までの流れを理解し、その中で必要な資金や人材を把握しておくことが重要です。
また開業に至るまでの流れをしっかり理解しておくことで、できる限り早めの資金調達や人材の確保など、前倒しに行動できるでしょう。
プロモーション方法や競合リサーチを行う
介護業界は人材不足が深刻な課題です。
その人材不足を補うには、競合のリサーチを行って適切なプロモーションを行っていくのが重要です。
自社では資格取得などスキルアップもサポートできる、iPadやスマートフォンで記録ができて事務作業の時間を短縮できるなど、競合とは異なった自分の事業所ならではの魅力をアピールしていくと良いでしょう。
介護業界への知識を深める
介護業界は3年に1度の介護報酬改定はもちろん、老人福祉法などの介護や高齢者、医療に関わる法律や制度の改訂も適宜行われています。
一度理解したら問題ないと思わず、介護や医療・福祉業界の変化にアンテナを立てながら、情報収集して知識を深めることが長期的に経営を続けるためにも重要といえるでしょう。
訪問介護の開業は失敗しないために事前に情報収集が大切
ここまで訪問介護の開業で失敗する原因や、開業後も経営で失敗する原因と、失敗しないための対策を解説しました。
介護業界の人材不足などの実情や、介護報酬改定の影響による新設の加算や減算など、常にアンテナを張って情報収集していくことが、失敗しないためには重要なのではないでしょうか。