【介護事業経営者向け】障害福祉事業でスタッフが離職しない方法とは
障害福祉事業では介護士だけではなく、看護師やリハビリ職など多職種が働いています。働く環境の整備が大変なのもあり、離職を防ぐのが事業経営者にとって課題です。
今回は介護事業経営者へ向けて、障害福祉事業でスタッフの離職を防ぐ方法を解説していきます。
障害福祉事業における離職の現状
厚生労働省が発表している「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、令和2年中の医療・福祉業界における離職率は14.2%です。
また、福祉業界のみの報告では公益財団法人介護労働安定センターによる「令和2年度介護労働実態調査」が参考になります。
この発表による訪問介護員・介護職員の離職率は14.9%であることから、福祉業界の離職率は高いと言えます。
他職種の離職率と比較する
一般的に、医療・福祉業界は離職率が高いというイメージがありますが、他産業の離職率を比較してみましょう。
「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、産業計の離職率は14.2%です。
このことから、福祉業界は産業全体の離職率よりもやや高く推移していると言えます。
介護を提供する人材は不足している
高い離職率であるにも関わらず、福祉業界の人材は不足しています。厚生労働省は「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」を発表しました。
2019年度時点での介護職員数を基準として、2025年度には+約32万人、2040年度には+約69万人の人員増加が必要になると推計しています。
介護職員数自体は増加を続けているとされていますが、必要数の需要増加には追いついていないのが現状です。
障害福祉事業における離職の理由
「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、転職者が前職を辞めた理由の上位3つは、以下の通りです。
1位:給料等収入が少なかった(9.4%)
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(8.8%)
3位:労働時間、休日などの労働条件が悪かった(8.3%)
ただ、これらの離職理由は福祉業界に限ったものではなく、産業全体の離職理由です。
価値観の違いや理念が理解できないなども理由の一つ
他職種も合わせた退職者全体の結果では、少し意見が異なります。エン転職の調査では、退職を考えたきっかけに関して、以下のような結果が出ています。
1位:やりがい・達成感を感じない
2位:給与が低かった
3位:企業の将来性に疑問を感じた
介護職は仕事のやりがいに関しては一般企業と比較して不満を持つケースは少ないようですが、障害福祉事業では経営者自体が医療職や介護経験がないことも少なくありません。
介護に対する価値観の違いや施設で示されている理念への理解不足は、職員のやりがいや達成感を損なうことにも繋がるため、対策をする必要があるでしょう。
離職を防ぐために必要な経営者の対応
「令和2年度介護労働実態調査」は、早期離職防止や定着促進に効果のあった方策も示しており、以下の結果が示されています。
1位:本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善に取り組んでいる
2位:残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組んでいる
3位:賃金水準を向上させる
4位:職場内のコミュニケーションの円滑化を図っている
まず、第1位と第2位の「労働時間・環境の改善」については、働き方の多様化という時代の流れの影響もあります。これらの対策として、時短勤務や時間給、非正規雇用の採用も増やすなどの方法が考えられるでしょう。
また、厚生労働省の「令和3年版過労死等防止対策白書」によると、「医療、福祉」の業界が精神障害の労災請求件数で最多となっています。
このことから、4位に挙げられている「コミュニケーションの円滑化」については、職員の精神的な負担を防ぐためにも対策が必要です。
具体的には、多職種が共感できる理念を掲げ共有すること、労働に対する目的や価値観などの特徴を職種ごとに捉えることが必要となるでしょう。
これらのことを踏まえて、離職したいと思わない組織づくりをすることが重要になります。
福祉業界の人材は社会や企業としての「人財」
職員が離職すると雇用機会の捻出に係る損失が発生するため、一人離職して新規雇用をするためには約1,000万円かかると言われています。
また、福祉業界の人材不足は、社会の需要を考えても重要な問題です。
労働条件やコミュニケーションの円滑化などから守るべき資産と考え、離職対策に取り組みましょう。