関わる全ての人の “自分らしさ” を追求し続ける介護施設 | デイサービス&スタジオ ミライプロジェクト新端橋

日程 : 2023年11月11日(土)
時間 : 13:30 〜18:20
場所 : ウィンクあいち (愛知県名古屋市)

介コネフェスの詳細はこちら

取材日:2022年4月4日

本記事では、愛知県名古屋市にある「デイサービス&スタジオ ミライプロジェクト新端橋」の施設長・牧野和博さんと、介護業界の未来を共に創る会社「介護コネクティブ」代表・寺本圭佑さんの対談をご紹介します。ミライプロジェクトの開業ストーリーや現在の取り組み、さらには今後に思い描く未来や大切にする熱い想いなど、その魅力にとことん迫ります。

目次

父親の介護の経験から

(寺本さん)ーー牧野さんが、ミライプロジェクトの施設長に就任されたきっかけを教えてください。

(牧野さん)株式会社ミライプロジェクトの代表である私の実の兄・隆広に誘われたことがきっかけです。会社を創業した背景には、父の介護経験があります。兄は当時、名のある企業の役員として働いていました。その忙しさもあり介護に積極的に関わることのできていなかった兄は、もっと自分にもやれることがある、と思ったのだと思います。父の死後、独居の母に将来介護が必要になったときに力になりたい、そして、地元に貢献したいと強く思い始めたそうです。

私は、兄から開業の話をうけた当時、介護施設の運営支援をするコンサルタントとして働いていました。しかし、それより以前は子どもから大人までの健康運動指導や介護予防事業など現場で仕事をしていたので、理想の介護の形を自分たちで創るということにはとても魅力を感じました。正直、会社をやめて起業することにはかなり迷いもありましたが、「人生折返し地点、今やらないと後悔する!」と、思い切って挑戦することにしました。

ーーお母様を安心して預けられる施設を作りたい、という思いが牧野兄弟の起業のきっかけだったのですね。

そうです。現在、母の介護は現実問題になってきています。介護保険を利用しながら、少しずつ介護サービスをうけるようになりました。

起業のきっかけは母のためにという思いが強くありましたが、介護はいずれ私自身や周りのスタッフにも必要となるものです。現在は、母はもちろん自分が通いたくなる、職員が通ってもいいなと思える職場をつくりたいと思い運営しています。自分達が通いたくなる施設にするためには、「人が動きたくなる仕掛け」を丁寧に作り込んでいくことが必要です。スタッフみんなと日々考え続けながらこの仕組みを作っています。

ミライプロジェクト開所後の奇跡

ーー2014年のミライプロジェクト開所後、様々なことはあったと思いますが、印象に残っている嬉しかったことややりがいを感じたエピソードがあれば教えて下さい。

コロナ禍以前、デイサービスでは非日常を楽しんでもらうために毎月行事をおこなっていました。日によって利用者さんが変わるので1週間にわたって開催するのですが、その行事を楽しむ利用者さんやスタッフの笑顔がとても好きでした。企画は、スタッフの主体性に任せているのですが、毎月スタッフの皆さんが楽しそうに積極的に動いてくださるのがとても嬉しかったです。行事は、春は花見、夏は夏祭り、秋は運動会、冬はクリスマス会などの季節を感じられる企画や、定期的演奏会など芸術・文化にもふれられるようなイベントが企画されます。

ーー毎月イベントを企画するのは大変だと思いますが、それを楽しみながら主体性をもって動けるスタッフの方がいるのは素晴らしいことですね。利用者さんも喜ばれる姿が目に浮かびました。

利用者さんがデイサービスに来るのを楽しみにしてくださるのは本当に嬉しいことですよね。行きたくないといわれる方はほぼいないので、それぞれが安心できる場所や楽しめることを提供できている結果なのかと思います。

いろんなコンテンツを用意し、選択肢を少しでも広げられるように務めています。一方で、私たちは気ままに過ごせる空間づくりも大切にしています。動きたくない時はただボーっとする時間もとれるように、動きたい人はどんどん動けるように、その人のその時の気持ちを第一に考えます。

ーー介護が必要になった人も、これまでの人生で得られた様々な価値観のもと生きておられると思います。ミライプロジェクトさんの取り組みやそこにかける想いにとても胸を打たれました。利用者さんと1対1で関わる際に、大切にされていることはありますか?

職員と利用者という関係以上に、私は「人と人しての関わり」を大切にするようにしています。利用者さん同士がそうであるように、私たちも同じ土俵に立つことが必要だと思っています。

ーー素晴らしい活動や成果がでている一方で、これは大変だった・苦労した、と思われたことはありましたか。

新型コロナウイルスの流行は、想定外でした。2020年3月日本初のデイサービス休業要請を受けて、さらに2021年の4月、施設内で初めて感染者が出たため2週間休業せざるをえなくなり、さらには施設の枠にとらわれないような活動やプロジェクトも進んでいましたが制限をよぎなくされました。世の中もまだ未知のウイルスに対して対応しきれていない時期でしたので、そんな中でスタッフや利用者さんを守らなければならないのは、精神的にも体力的にも結構大変でしたね。

普段は、現場でやりたいと声があがったことは基本的に通すようにしているのですが、あの時ばかりは判断は特に慎重になりました。スタッフの自立性を奪わないように、でも安全第一で動かなければならないので苦労しました。

ーーミライプロジェクトさんは定員70名と大規模の施設でもあるため、未知の感染症に対する対応には特に慎重にならざるを得なかったと思います。現在は一時中断している、施設の枠にとらわれないような面白い活動やプロジェクトとは、どのようなものだったのですか?

そうですね、たくさんあるのですが、例えば、施設の2階にあるスタジオを利用して子どもたちの発表会を開催したり、名古屋大学のレゴ部の活動を行ったり、町内会の活動で施設を使ったり、子ども同伴出勤を進めていったりしていました。施設に通う利用者さんだけではなく、地域の子どもや学生、住民がまるごと関われるような居場所を作りたいと思っていたのです。今後は、感染状況をみながら可能なところから再開していきたいと思います。

ーー様々な面白い構想に、とてもワクワクしました! 多くのことに力を入れられていて素晴らしいですね。

ありがとうございます。その他、私たちはスタッフが働きやすい環境をつくることにも力をいれています。給与や休暇はもちろんハード面の整備も含めて、スタッフの働く環境をとにかく大切にしています。事業を始めるに当たり、会社は儲からなくてもいいから給与水準をとにかく高めに設定することを会社として設定しました。介護職員の労働条件を変えることを、現場から変えていく挑戦をしたかったのです。年間休日は124日、休み希望も極力叶えるように毎月シフトを組んでいます。職員の休憩室の確保もしています。

今後に思い描く未来

ーーミライプロジェクトさんが大切にする理念を教えて下さい。

私たちは、「自分らしくいきいきとした毎日が送れるよう『ご利用者様』『職員』『地域』と共に歩みます」という理念のもと活動しています。

介護が必要になった方でも、病気や怪我で弱った方でも、寝たきりになりたいと願っている人はいません。その方々が活動できる喜びは、サポート次第で実感してもらうことは可能だと思っています。正直、介護施設にはさまざまな制限があります。しかし、私はそこに違和感を感じ開業しました。介護保険を利用するようになった途端に制限が増え、介護状態から抜け出せなくなる現状を、なんとかして変えていきたいです。

また、働くスタッフも同じです。スタッフがやりたいと思ったことは、会社としても常に全力で支援したいと思っています。たとえそれが介護の常識からはずれていたとしても、スタッフ本人の熱意が十分伝わったらそれでOKです。独立して事業をおこしたい、企業内起業をしたい人も大歓迎です。スタッフがいきいきと仕事をできる環境を整えることが、今の私の重要な仕事の一つだと思っているので、これからさらにサポート体制を整えていきたいです。

ーー素晴らしいですね。最後に、ミライプロジェクトさんの今後の展望を教えて下さい。

私たちは、自然発生的な状況は別として、他店舗展開をどんどん推進していきたいとは思っていません。広げることよりも、目の前の方にとにかく質の高いものを提供し続けていきたいと考えています。今後は、大規模施設で受け入れが難しくなってしまった方・重度化した方のサポートや、子どもから大人・地域の高齢者など、いろんな方が普通に出入りできるような施設にしていきたいです。また、介護が必要となる一歩手前の人を対象とした事業や、介護保険以外の事業にも力を入れていきたいです。変化し続けることができる現場になるよう、仕組み作りに力を入れます。

ーー地域にとって必要なサービスを自然と拡大していく考え方がとても素敵だと感じました。
これからもミライプロジェクトさんのさらなるご活躍を、心から応援しています!

● プロフィール
牧野和博(まきの・かずひろ)
株式会社ミライプロジェクト 取締役/ミライプロジェクト新瑞橋 施設長
1970 年名古屋市生まれ。愛知教育大学教育学部卒業後、公益財団法人名古屋 YMCA で企業体育指導、 自治体での健康づくり施設の開設、管理指導業務、子どもから大人までの健康運動指導を経験。愛知県高浜市で国のモデル事業で介護予防事業に関わる。2007 年、株式会社グローバル総合研究所入社。介護施設の開設、運営支援のコンサルティングを経験。2014 年、株式会社ミライプロジェクト入社。

寺本圭佑(てらもと・けいすけ)
愛知県出身。理学療法士として13年間医療介護現場で働く中で「介護業界にはもっと理学療法士の人材採用や教育・定着への取り組みが必要だ」と感じ、2019年に株式会社介護コネクティブを設立、代表取締役就任。介護関連企業に特化をした経営支援や営業支援、理学療法士採用支援や定着支援サービスを日本全国で展開する。2021年よりまちづくり事業部を新設し、11月愛知県西尾市にデイサービスIKIGAIを開所。

画像参照元:大規模通所介護施設 「デイサービス&スタジオ ミライプロジェクト新瑞橋」のウェブサイト

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この記事を書いた人

新卒で総合病院のICU看護師として勤務。病院より広い世界を見たい一心で海外へ飛び出した後、現在はフリーランスの道を歩んでいます。ここ数年は「看護だけでない医療・介護の広いフィールド」「患者さんではなく、医療従事者」に興味津々です。

看護師になった理由は「人の話を聞いて、相手の人生をよい方向に導きたい」と思ったから。この思いをフリーランスのフィールドへ転換し、インタビューライターとして活躍中。
超ジェネリストタイプ。「ハイライトすべきもの・人をハイライトしたい!」をモットーに、輝く原石をもっと輝かせるために多方面で活動しています。趣味は旅、読書、英語。もう一度看護師として働くのもいいかも!とひそかに思っています。

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