東海技研工業による自立起立補助具『ラ・クリップ』の開発について
恵美グループの株式会社東海技研工業による、自立起立補助具『ラ・クリップ』の開発について紹介します。
株式会社東海技研工業の理念と事業内容
恵美グループでは、1979年にスタートした株式会社恵美製作所、1988年に板金加工•多品種少量生産を開始した東海技研工業、自由な発想で、人々の快適な暮らしを支える株式会社ハッソーの3つの会社で事業展開をしています。
開業当初から『他の人がやらない仕事をやろう』という理念が受け継がれ、それがさまざまな開発につながっています。
これまで、板金で作ったお墓、お湯のないサウナなどを商品開発して販売してきました。
自立起立補助具『ラ・クリップ』とは
自立起立補助具『ラ・クリップ』とは、要介護者の移動を補助する器具のことです。
もともと東海技研工業は板金加工事業をしており、福祉関係とは縁がありませんでした。
『ラ・クリップ』のきっかけとなったのは、社員のお父様(91歳)の大腿骨骨折です。ご家族が車椅子移乗の介助に苦労していたことから、なんとか移動が楽にならないかを考え、『ラ・クリップ』を開発しました。
参考になったのは「車に乗るとき、手すりがあると楽になる」という発想です。
社内の階段を使って3人で試行錯誤して1ヶ月で板金加工を行い試作品を作りました。そのお父様に使っていただいたところ、1回目で「あら!立てた!」と『ラ・クリップ』を使って立つことができ、ご本人も驚かれたのです。
それから8ヶ月使っていただき、要介護4に近い3から、要介護2までの改善がみられました。
人間誰しも、1人でできることが増えると意欲が湧き、体力がついてどんどん元気になると感じます。そのお父様は、『ラ・クリップ』を使って毎日自分で車椅子に移動し、トイレへ行けるようになりました。
もともと『ラ・クリップ』はずっしりと大きいものでしたが、器具の大きさや重さを考慮しながら体重80、90キロの方が使用しても倒れないものを開発しました。
『ラ・クリップ』使い方の説明
『ラ・クリップ』は、ベッドの方に傾いたパイプを入れています。
<起き上がり>
- ベッドに近い方の手を伸ばしてパイプを引っ張る。
- もう片方の手でパイプの高い位置を引っ張る。
- パイプを引っ張って腰を軸にして足を下ろしながら、体を起こす。
<立ち上がり>
- 上のパイプの真ん中を握り、下のパイプに肘をつける(ここで体を安定させる)。
- 反対の手でパイプの先端を握る。
- 体を斜め45度に引き寄せながら立ち上がる。
※右手・左手・肘の3点支持がポイントです。
立ち上がった後は立位保持ができるため、その間に寝衣交換も可能です。車椅子に移乗してトイレに行くこともできますし、その後ベッドに戻る際は両手でパイプを持ったままベッドに座れます。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
正式な販売開始は令和3年3月です。しかしながら、コロナの影響で展示会へ人が集まらず、販売過程で難航することもありました。
『ラ・クリップ』は従来の手すりと見た目が異なることから、手すりだと分からない、使い方も分からないということで、世の中に知られていないのが現状です。
ただ、福祉や介護領域の方によると、ベッドサイドに加え、トイレで立ち上がることが困難な方が多いという声もいただいたため、トイレ用の『ラ・クリップ』制作にもこぎつけました。
東海技研工業『ラ・クリップ』のこれからの展望
これまでは福祉用具として販売していました。今後は、福祉に限らず、立ち上がりに苦労している方、障害者の方などユニバーサルに使える手すりをさらに開発していきたいと考えています。
今年は4月にバリアフリー店に出店しました。
これからは大きな展示会等にも出展し「今まで見たことない手すりだけれど、いいものが世の中にあるんだ」と、いろいろな方に触ってもらい、自立した生活を支えられる手すりを開発していきたいと考えています。
ラ・クリップの公式ホームページ
ラ・クリップ トイレ 用 動作説明
東海技研工業グループ