歩行器の種類は何がある?選び方や使い方のポイントも解説!
「歩行器にはどんな種類があるの?」
「選び方や使い方を知りたい」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
歩行器は種類が多いため、選び方に迷われている方も多いと思います。
そこで本記事では、歩行器の種類・選び方・安全に使うポイントなどについて解説します。
使用者に合わせた歩行器の選定ができるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも歩行器とは
歩行器は、主に高齢者や身体に障がいのある方が、歩行や移動する際に支援をしてくれる歩行補助具の一種です。
「両手で使う」「脚が4つある」という特徴が、同じ歩行補助具である杖と大きく異なる点です。
折りたたんだり高さを調節したりできるようにもなっているため「収納しやすい」「使う方の状態に合わせられる」という一面も。
歩行器を使うと広い面積でバランスをとりながら歩けるため、転倒予防が可能です。また、歩行に不安がある方の自立支援にも役立ってくれます。
歩行器にはどんな種類がある?
歩行器には大きく分けて以下の4種類があります。
- 固定式
- 交互式
- キャスター付き
- 歩行車
それぞれの特徴とメリット・デメリット、適用になる方などを解説していきます。
固定式
固定式歩行器は、両手で持ち上げながら使うタイプの歩行器です。
【メリット】
4本の脚が地面にしっかりと接地しているため安定感があります。使う方の両足の幅よりも歩行器の幅の方が広いため「支持基底面(バランスをとれる幅)」が広くなり、バランスをとりやすいことがメリットです。
【デメリットや注意点】
キャスターがついていないため押して移動することはできず、必ず持ち上げる必要があります。
また、平地では安定して使えますが、砂利道や高低差のある不整地では不安定になりやすいことがデメリットです。そのため、使用する環境は屋内がよいでしょう。
【適用になる方】
歩行器を持ち上げる腕の力をもっている人や、バランスに不安があるため安定して立ったり歩いたりしたい人が適用になります。
交互式
交互式歩行器は、一見すると固定式歩行器との違いがわかりません。
大きな違いは、固定式歩行器が持ち上げて使うのに対して、交互式では歩行器の左右の足を交互に動かしながら使うという特徴があります。
例として、右足から歩き出す場合は以下の順に操作します。
- 左手で歩行器を一歩出す
- 右足を出す
- 右手で歩行器を一歩出す
- 左足を出す
【メリット】
固定式では持ち上げた時にバランスを崩す方が中にはいますが、交互式歩行器は持ち上げる必要がないため、バランスを保ったまま操作可能です。
また、左右どちらかの脚が必ず接地しているため常に安定しています。
左右の手足を交互に動かすため、正常な歩行に近い体の動かし方を練習できます。
【デメリットや注意点】
交互の動きは慣れるまでに時間がかかります。また、持ち上げて使うわけではないので、軽微な段差の乗り越えでもむずかしい場合があるので注意が必要です。
固定式と比較すると速く歩けるものの、一歩ずつ進むのに手順が多く、わずらわしさを感じます。そのため、長距離の歩行には不向きです。
【適用になる方】
歩行器を持ち上げる力がない方や、固定式よりも速く歩きたい方、軽度のバランス障害の方などが適用になります。
キャスター付き
キャスター付き歩行器は、固定式歩行器の4脚部分にキャスターがついているものをいいます。
前輪のみのものと、前輪・後輪それぞれが付いたものがあり、押しながら歩きます。キャスターは、単軸タイプで前にのみ回転するものと、多軸タイプで前輪が回転するものなど種類が豊富です。
【メリット】
キャスター付き歩行器のメリットは持ち上げずに歩けるため、腕の力が弱い方でも安心して使えることです。
また、押して進むことで固定式よりも大きい速度で進めます。
【デメリットや注意点】
大きな段差の上り下りには不適です。キャスターの大きさや種類によって、進みやすさや方向転換のしやすさが異なります。
そのため、選び方を間違えると使いにくい、転倒につながりやすいなどのデメリットもあります。
【適用になる方】
歩行器を持ち合あげることがむずかしい方や、固定式歩行器や交互式歩行器よりも速く歩きたい方が適用です。
歩行車
押して歩くタイプの中でも、肘を置いて使うものやシルバーカーなどを、歩行車といいます。
キャスターの回りやすさ(抵抗)を変えたり、パワーアシスト機能により傾斜に合わせて速度を自動で調節してくれたり、座って休めるようになっているなど、ラインナップは豊富です。
【メリット】
腕を置くタイプのものは、足腰や手首に痛みがあっても使いやすく、歩く練習を始めたばかりの人でも安心して使えます。買い物などの外出に適したものもあり、さまざまな用途から選べるのもメリットです。
【デメリットや注意点】
ラインナップが豊富な分、選び方を間違えると転倒などの事故につながりやすくなります。
ブレーキ以外に、収納部分があったり電動タイプでは操作が複雑なものもあったりしますので、使い方をしっかり理解しなければなりません。
【適用になる方】
足腰や手首に痛みがあり負担を軽くして歩きたい方や、外出・荷物の運搬などに使いたい方、腰かけて休みたい方などが適用になります。
歩行器を選ぶ際の3つのポイント
歩行器は使う方に合った選び方をすれば便利なものである一方、間違った選び方をしてしまうと、転倒やけがにつながる可能性があります。
以下で、歩行器の選び方について失敗しないポイントを3つ解説します。
用途や使う場所を明確にする
歩行器は先述したようにそれぞれ特徴が異なります。そのため、用途や使用場所に応じて以下のように選んでみましょう。
用途の例には以下のものがあります。
- バランスをとって安全にゆっくり歩きたい:固定式歩行器、交互型歩行器
- 速く快適に歩きたい:キャスター付き歩行器、歩行車
- 時々休んだり、荷物を運んだりしたい:歩行車、シルバーカー
場所の例には以下のものがあります。
- 屋内の平らな道が中心:固定式歩行器、交互型歩行器、キャスター付き歩行器
- 屋外が多く不整地も歩きたい:歩行車、シルバーカー
体の状態にあったものにする
体の状態とは「痛み」「バランスの取りやすさ」「お持ちの病気」など、さまざまな要素があります。
- バランスに不安がある:固定式歩行器、交互式歩行器、キャスター付き歩行器
- 足腰の痛みが強い:前腕支持型歩行車
- 病気によって速度調節が難しい:電動アシストや抑速ブレーキ付き歩行車
- 歩行が自立していて、軽い補助があればよい:シルバーカー
歩行器の選定を間違えると痛みや病気の悪化につながる可能性もあります。わからないことは主治医やリハビリの担当者に聞いてみるとよいでしょう。
体格にあったものにする
多くの場合、歩行器や歩行車は体格に合わせた使い方ができるよう高さ調整などが可能です。
高さの目安は以下のとおりです。
- 歩行器のグリップ:腕を下ろした時に、手首の外にある骨の突起と同じ高さ
- 歩行車の腕置き:腕を置いた時に、肘の角度が90°になる高さ
- シルバーカー:「(身長÷2)+5~10cm」になる高さ
ほかにもハンドルの幅、角度などを変更できるものもあります。
可動部分が多いと、調整のしかたがわかりにくいこともあると思います。また、背中・腰・ひざなどが曲がっている方では、微調整が必要な場合もあるでしょう。
詳しい調整のしかたは、福祉用具の事業者やリハビリの担当者などに確認してみてください。
歩行器を利用する際の手続き
歩行器を利用したいと思っても、どうすれば手に入るのかわからない方もいるかと思います。
まず、介護保険をご利用の方は担当のケアマネジャーへ相談してください。
歩行器をはじめとした福祉用具を取り扱う「福祉用具事業者」を紹介してくれます。
歩行器はレンタルして使うのがおすすめ
歩行器を使用することになったら、まずはレンタルして使うとよいでしょう。
というのも、レンタルは不具合があったり、使い勝手が悪かったりすればメンテナンスや交換ができるからです。
体の状態が変化した場合にも、使用者に合ったものを選びなおせます。
屋内での使用が中心でしたが、屋外にも出ていけるようになったため、外出用の歩行器をレンタルしたいというケースも少なくありません。
そのため、まずはレンタルで様子を見てみると良いでしょう。
歩行器にかかる料金
歩行器の利用には料金がかかります。
レンタルの場合、市区町村や福祉用具事業者によって異なりますが、一月あたり2,000~8,000円前後になります。
介護保険適用で1割負担の方は、200~800円です。2割・3割負担の方は、その2倍・3倍の自己負担が発生します。
なお、購入の場合は商品によって料金の幅がありさまざまです。
安くて1万円、高いもので10万円を超えるものもあります。料金が高いほど機能が多い傾向ですが、基本的には使用者の用途や状態に合わせて選ぶようにしましょう。
安全に使うポイント
歩行器を安全に使うためのポイントを以下で解説します。
正しく使えば転倒やけがの予防になりますので、ぜひ参考にしてください。
使い方を理解する
歩行器の種類や用途に応じた使い方を理解することが大切です。
ブレーキレバーのついている歩行器では、握るとブレーキがかかり、レバーを下ろすとロックがかかり止まるようになっています。
ロックされていない状態で座面に座ったり、ロックしたつもりで立ち上がりに利用したりすると転倒の危険性があります。
どの歩行器にどういった機能があるのかを理解し、正しい使い方を心がけましょう。
歩行器を使う方の理解が難しい場合は、介護する方が見守ったり操作を補助したりすると安心です。
動線を確保する
自宅で歩行器を使用する際は、動線を確保することも大切です。杖のようにコンパクトではなく、ある程度の幅が必要になります。
「動線上に物が散乱していないか」「家具の配置が移動をさまたげていないか」など確認し、導入する前に使用環境を整えておきましょう。
歩行器の種類を知ることで使用者にあった選定が可能に
本記事では歩行器の種類・選び方・安全に使うポイントなどについて解説しました。
歩行器は種類が多いため、選ぶ際に3つのポイントを押さえておきましょう。
また、安全に使うポイントとして使い方の理解や動線の確保なども大切です。
歩行器を利用したい場合は、介護保険を利用している方であれば担当のケアマネジャーや医師・リハビリ担当者・福祉用具事業者にご相談ください。