
日程 : 2023年11月11日(土)
時間 : 13:30 〜18:20
場所 : ウィンクあいち (愛知県名古屋市)
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「居宅介護支援事業所の立ち上げには何か資格が必要?」
「必要な資格はどうやって取得する?」
このような疑問をお持ちの方もおられるでしょう。
居宅介護支援事業所には、主任ケアマネジャーの資格をもった管理者1名の配置が必須です。
今回は主任ケアマネジャーについての概要と、資格の取得方法を解説します。
記事後半では、居宅介護支援事業所の立ち上げ手順についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

結論からいうと、居宅介護支援事業所を立ち上げるために必要な資格は「主任ケアマネジャー」です。
2021年4月以降の立ち上げからは、居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネジャーであることが要件となりました。
なお2021年4月以前に立ち上げ、主任ケアマネジャー以外の者が管理者である事業所においては、2027年3月まで猶予されます。
よって、これから立ち上げを検討している方は主任ケアマネジャーの資格を取得しなければなりません。

主任ケアマネジャーは、通常のケアマネジャーの資格取得後に一定期間の実務経験と要件を満たし、指定された研修を受講して得られる資格です。
以下では主任ケアマネジャーの役割と求められる能力について解説します。
主任ケアマネジャーの役割は以下のとおりです。
居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネジャーに限定されるのは必然的といえます。
理由は、地域の高齢者が抱える課題が多様化しているからです。
少子高齢化社会において「介護の担い手の不足」「社会保障費の増大」などが問題になっているため、現状の介護保険サービスでは対応しきれない地域・個人の課題が多くなってくると考えられます。
主任ケアマネジャーは公的サービスのみならず、多様な地域資源を利用・開発し、地域や個人の抱える課題を解決していかなくてはなりません。
そういった意味で、地域の高齢者を支える居宅介護支援事業所の管理者に主任ケアマネジャーの資格が必須とされるのは、必然的といえるでしょう。
主任ケアマネジャーに求められる能力には以下のものがあります。
広い知識・スキル・経験は、専門性の高いケアプランを作るために必須であり、通常のケアマネジャーよりも広い視点で、利用者の生活をとらえる必要があります。
また、各サービス事業者や医療機関などとよりよい関係性を築いたり、利用者ニーズを把握したりするためには、優れたコミュニケーション力が求められます。
主任ケアマネジャーには通常のケアマネジャーを教育する役割があるため、事業所のリーダーとして複数の職員をマネジメントしなければなりません。業務管理なども含め、高いマネジメント能力が求められるでしょう。

主任ケアマネジャーの資格を取得するためには「主任介護支援専門員研修」を受講しなければなりません。
地域によって受講の要件が異なるため、主な内容を紹介します。
以下で受講の条件と研修内容について見ていきましょう。
主任ケアマネジャーになるには、通常のケアマネジャーと比較し十分な知識と経験が求められます。
研修の受講条件は以下のとおりです。
「専門研修課程Ⅰ及び専門研修課程Ⅱの受講」または「介護支援専門員更新研修を修了した者」であり、かつ以下のいずれかを満たす必要があります。
前項の条件を満たせば研修を受講できます。研修の内容と時間数は以下のとおりです。
なお、日程や時間は都道府県ごとに異なります。詳細は、各都道府県に確認しておくとよいでしょう。
一般的には12日間で取得できるカリキュラムになっており、オンラインと対面研修の組み合わせで受講できる都道府県もあります。
| 研修科目 | 時間 | |
| 講義 | 主任介護支援専門員の役割と視点 | 5 |
| ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援 | 2 | |
| ターミナルケア | 3 | |
| 人材育成及び業務管理 | 3 | |
| 運営管理におけるリスクマネジメント | 3 | |
| 講義・演習 | 地域援助技術 | 6 |
| ケアマネジメントに必要な医療との連携及び多職種協働の実現 | 6 | |
| 対人援助者監督指導 | 18 | |
| 個別事例を通じた介護支援専門員に対する指導・支援の展開 | 24 | |
| 合計 | 70 | |
出典:厚生労働省「介護支援専門員専門研修ガイドライン」

立ち上げには以下の順番で要件を満たし、居宅介護支援事業所の指定を受けます。
立ち上げの要件4つとは以下のとおりです。
それぞれ見ていきましょう。
立ち上げの申請者は、法人格を有する必要があります。
本来組織には、取引・登記・口座開設・売買契約・資金の所有などの「権利能力」がありません。
法人格を有する、つまり会社を設立することで組織に「人格」が認められ、これらの権利能力を有するようになります。
居宅介護支援事業所の立ち上げにおいては、事業目的に「介護保険法に基づく居宅介護支援事業」と記載した会社を設立しなければなりません。
居宅介護支援事業所の人員基準は、管理者1名のみいればよいとされています。
ただし、管理者は以下の基準を満たす必要があります。
ケアマネジャーとの兼務もできますが、利用者が35人を超えるごとに一人配置しなければなりません。
設備基準は以下のとおりです。
| 設備 | 内容 |
| 事務室 | 職員と物品・設備が収容できる広さ |
| 相談室 | 2名以上で利用でき、相談の内容が漏れないように配慮された遮へい物を設置する |
| 会議室 | 4名以上で利用でき、サービス担当者会議等の内容が漏れないように配慮された遮へい物を設置する相談室との兼用は可能 |
| 必要物品・設備 | 居宅介護支援事業を実施するために必要な物品・設備デスク・椅子・電話・FAX・コピー機・パソコン・洗面台・トイレ・鍵付き書庫など |
注意点として個人の自宅で行う場合は、生活空間と事業所を明確に分けなくてはなりません。
運営基準とは、事業開始にあたって行わなければならない基準のことをいいます。
居宅介護支援事業所の運営は、以下に示した基準に従って行う必要があります。
| 内容および手続きの説明および同意 | 提供拒否の禁止 | サービス提供困難時の対応 | 受給資格等の確認 |
| 要介護認定の申請にかかる援助 | 身分を証する書類の携行 | 利用料などの受領 | 保険給付の請求のための証明書の交付 |
| 指定居宅介護支援の基本取り扱い方針 | 指定居宅介護支援の具体的取扱方針 | 法的代理受領サービスに関する報告 | 利用者に対する居宅サービス計画等の書類の交付 |
| 利用者に関する市町村への通知 | 管理者の責務 | 運営規程 | 勤務体制の確保 |
| 業務継続計画の策定等 | 設備及び備品等 | 従業者の健康管理 | 感染症の予防及びまん延の防止のための措置 |
| 掲示 | 秘密保持 | 居宅サービス事業者等からの利益収受の禁止等 | 苦情処理 |
| 事故発生時の対応 | 虐待の防止 | 会計の区分 | 記録の整備 |
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(厚生労働省)を加工して作成
立ち上げの要件4つを満たしたら、申請書類を市区町村へ提出します。
主に以下の書類が必要ですが、自治体によって異なるため必ず確認しておきましょう。
今回は居宅介護支援事業所の立ち上げに必要な「主任ケアマネジャー」の資格について解説しました。
主任ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所以外では地域包括支援センターにも必須の資格です。
通常のケアマネジャーよりも専門性が高く、今後の少子高齢化社会で活躍が見込まれる貴重な資格でもあります。
ケアマネジャーからよりスキルアップしたいと考えている方は、まずは主任ケアマネジャーを目指してみてはいかがでしょうか。
2008年 理学療法士免許取得。
老健で入所・通所・訪問リハビリに従事。
保有資格は介護支援専門員、福祉住環境コーディネーター2級。
介護保険、地域包括ケアなどに興味関心あり。
介護未来マガジンでは、制度概要や資格に関する内容をわかりやすく執筆することを心がけている。