看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)を開設する流れを解説
看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)は介護保険サービスの一つで、退院後で状態が不安定な方や、医療依存度が高い方が利用できるサービスです。
高齢化が進み医療依存度が高い高齢者が増えていく中で、なるべく在宅で生活を続けていきたいと考える高齢者やその家族も多いです。
今後も需要が高まっていくサービスと言えるでしょう。
今回はそんな看護小規模多機能型居宅介護とは何か、開設の流れを解説します。
看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)の開設にあたって必要な知識
まずは看護小規模多機能型居宅介護(かんたき:以下省略)を開設するにあたって、知っておくべき知識を解説していきます。
看護小規模多機能型居宅介護とは
看護小規模多機能型居宅介護は訪問介護と小規模多機能型居宅介護を合わせた機能を持つサービスです。
そもそも2006年に地域密着サービスの一環として小規模多機能型居宅介護が設立されました。
小規模多機能型居宅介護は訪問介護、通所などの在宅サービスを組み合わせて利用できるものです。
しかし日本看護協会が実施した調査から、在宅療養や在宅での看取りにおいて、医療面でのサポートが不安だという声も聞かれました。
こうした医療面の需要を受けて、従来の小規模多機能型居宅介護へ「訪問看護」を追加した看護小規模多機能型居宅介護が2012年4月に創設されました。
看護小規模多機能型居宅介護は「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」のサービスが利用できるため、医療的なニーズの高い高齢者や終末期の方が気軽に利用できるようになりました。
看護小規模多機能型居宅介護の利用方法
看護小規模多機能型居宅介護は24時間365日稼働しており年中無休です。
定員は登録制の29人までとなっています。
利用方法は利用者の求めるサービスを組み合わせる仕組みとなっており、基本的に9時から夕方16時まで「通い」を利用している方が、身体状態が悪化したため16時から「泊まり」へ変更するという形も可能です。
看護小規模多機能型居宅介護の人員配置
看護小規模多機能型居宅介護の人員配置は下記の通りです。
日中 | 通い:常勤換算で3対1以上 訪問:訪問:常勤換算で2以上※どちらも1人以上は看護職員であること※通いと訪問は兼務可能 |
夜間 | 夜勤:時間帯を通じて1人以上宿直:時間帯を通じて1人以上※泊まりの利用がない日は、サービス提供が可能な体制が整っていれば、夜間の人員配置は不要※夜勤や宿直の看護配置体制は設けられていない |
看護職員 | 常勤換算2.5人以上(1人以上は常勤の看護師又は保健師)※訪問看護ステーションを併設している場合は兼務可能 |
介護支援専門員 | 専従で1人以上※同一事業所の他の職務と兼務可、非常勤可 |
管理者 | 常勤で専従の者が1人※保健師か看護師、または経験要件あり |
参考:公益社団法人日本看護協会「“看多機”とは|-創設の背景、制度の概要、サービスの動向-」
看護小規模多機能型居宅介護の事業所数
看護小規模多機能型居宅介護は需要の高まりから、年々事業所の数も増加しています。
2015年3月には182件のみだった事業所が、2021年3月には744件へと増加しており、今後も需要に応じて増加していくことが見込まれるでしょう。
看護小規模多機能型居宅介護の開設までの流れ
需要が高まる看護小規模多機能型居宅介護について、開設を検討している経営者も多いのではないでしょうか。
ここからは看護小規模多機能型居宅介護の開設までの流れを解説します。
- 事業計画書の作成
- 法人の設立・または事業内容の変更
- 事業所の物件を選定または設立
- 自治体との調整や申請
それぞれ解説していきます。
事業計画書の作成
介護事業だけでなく、どの事業においても事業計画書の作成は行いましょう。
長期的な事業の見通しだけでなく、銀行からの融資を受けたり、事業所設立において自治体へ書類を提出したりする際にも必要となります。
法人の設立・または事業内容の変更
看護小規模多機能型居宅介護の事業所の開設にも、法人格が必要です。
また、すでに別の介護事業を行っていたものの、看護小規模多機能型居宅介護へ事業を変更したケースもあります。
実際に2019年時点で看護小規模多機能型居宅介護の開設前は、訪問看護ステーションを行っていた事業所が40.1%、小規模多機能型居宅介護事業所を行っていた事業所が31.1%となっています。
別の事業所を運営している既存の法人で看護小規模多機能型居宅介護を開設する場合には、事業内容の変更を忘れずに行いましょう。
事業所の物件を選定または設立
看護小規模多機能型居宅介護の事業となる物件を選定するか新たに設立しましょう。
消防法や建築基準法などを考えながら物件を選んだり、必要があれば物件の改修工事をする必要があるでしょう。
後に市区町村の確認時に改修が必要と言われる前に、自治体へ予め相談しておくのも手です。
自治体との調整や申請
該当の自治体へ事業計画書を持ち込み事業の説明や、必要があれば物件の改修などを行い事業申請をしていきます。
自治体の介護保険事業計画に看護小規模多機能型居宅介護が入っていない場合もあるため、高齢者保健福祉推進協議会を開催し理解を得る必要があるケースもあります。
自治体との調整、書類の提出による申請が通れば開設が可能です。
看護小規模多機能型居宅介護の開設は明確な事業計画を
看護小規模多機能型居宅介護についての基礎知識や開設の流れを解説しました。
看護小規模多機能型居宅介護の需要は高まりつつあるものの、まだ認知度が低い事業です。
前述したように自治体の介護保険事業計画に看護小規模多機能型居宅介護が入っていない場合もあるため、看護小規模多機能型居宅介護について理解を深めて、明確な事業計画を立てておく必要があるでしょう。