ショートステイで認知症は進む!?理由と対策を解説します!
「ショートステイを利用すると認知症は進むの?」
「理由や対策を知りたい」
このようにお悩みの介護者もおられるでしょう。
ショートステイは心身機能の維持・改善や孤立感の解消、また家族の介護負担軽減などを目的とした短期入所サービスです。
しかし、認知症の方がショートステイを利用すると「症状が進んでしまうのではないか」と心配されるのではないでしょうか。
本記事では、認知症の方がショートステイを利用すると症状が進むかどうかについて触れ、その理由や対策について解説します。
ショートステイを利用すると認知症は進む?
結論からいうと人それぞれです。
利用する方の病状や施設職員の対応によって、認知症が進んでしまうことがあるかもしれません。
認知症の方がショートステイを利用するにあたって大切なのは、その方の考えていることやおかれている状況を介護者が理解するよう努め、困りごとに対処することです。
ショートステイを利用すると認知症が進むといわれる理由
では、ショートステイを利用すると認知症が進む方がいるのはなぜでしょうか?
理由を以下で解説します。
環境の変化に混乱するから
認知症の方は、環境の変化に順応しにくいといわれています。
ふだん住み慣れている自宅から一転して、見たことも聞いたこともない施設で急に寝泊まりしなければならなくなるのです。
「ここはどこだろう」「どうして自分はここにいるのだろう」と混乱し、パニックになってしまうことがあります。
そのため「家に帰りたい」と施設職員に訴えて落ちつかなくなることがあるのです。
ここで施設側の対応に誤りがあると、帰宅願望(家に帰りたいという欲求)が強くなり、いわゆる問題行動が悪化してしまうのです。
これはショートステイから家に帰ってきてからも続くことがあり、認知症が進んでしまったと思われる理由のひとつといえます。
過介護によって何でもやってもらうから
ショートステイを利用していると、施設の職員から身のまわりの介護を受けます。
自宅にいればふだん自分で行っていることまで手伝ってもらうため、自分で考えたり行動したりする機会が少なくなってしまうのです。
そのため、ふだんよりも刺激が少なくなってしまい「ボーッとする」「無気力になる」といった状態になってしまう危険性があります。
行動を制限されるから
ショートステイでは、施設内でけがをしたり転倒したりしないよう、見守りや介助を受けることが多くなります。
時には「危ないから」という理由で行動を極端に制限され、立ち上がって歩こうとするだけで「ここにいてください!」と椅子に座らされてしまうことがあります。
ふだんは好きなタイミングで立って歩き、トイレに行き、好きなテレビ番組を見たり食事をとったりする生活が普通です。
しかしショートステイを利用したとたんに、一気に行動を制限されてしまうことがあるのです。
このように認知症の方が行動を制限されることで、きゅうくつでもどかしい思いをしてしまい、それに反発するように問題行動を起こす悪循環におちいってしまうことがあります。
認知症の方がショートステイを利用するメリット
ショートステイを利用すると認知症が進む場合があることをお伝えしました。
しかしショートステイを利用するメリットも多くあります。
ここからは、認知症の方がショートステイを利用するメリットについて解説します。
自宅と違う刺激を味わえる
ショートステイでは、家族以外の方と交流する絶好の機会です。
同年代の方や趣味・趣向の合う方がいるため、かつて夢中になっていたことや仕事の話をする仲間が作れる可能性があります。
またショートステイには、認知症に関する知識や対応方法を専門的に学んでいる職員も在籍しているため、個々人にあった運動や作業活動を提供してくれるでしょう。
このように自宅にはない刺激を受けられるため、張りのある生活を送れるメリットがあります。
家族の介護負担を軽減できる
ふだん介護している家族にとって、認知症の方がショートステイを利用している間は休むことができます。
このような休息によって介護から解放することを「レスパイトケア」といいます。
認知症の方の生活を支えている家族にとってとても大切な時間です。
「施設に預けず、自分たちでがんばって見ていきたい」と強く思う方もいると思いますが、長い介護生活を続けていくためには家族も休むことが大切です。
ショートステイの利用を後ろめたいと思う必要はありません。
長期的な入所を視野に入れられる
認知症介護の負担が大きくなってくると、長期的に入所できる施設を検討することもあります。
ショートステイを利用しておくと利用時の様子がわかるため、長期的な入所も視野に入れられるようになります。
まずはお試しでショートステイを利用し、様子を見てから同施設に入所するか、別の施設を探すかといった、選択肢を増やしておくとよいでしょう。
認知症の人が利用できるショートステイ施設とは
それでは、認知症の人が利用できるショートステイとはどのような施設を指すのでしょうか。
以下を参考にしてください。
施設の種類 | 特徴 |
特別養護老人ホーム | 自宅生活が難しい方への介護や生活サポートが主 生活の場としての機能 |
介護老人保健施設 介護医療院 療養病床を有する病院・診療所 | 医師が常時配置され、医学的管理をしてくれる リハビリの専門職が在籍し、必要な介護を受けつつリハビリテーションも受けられる 老人保健施設は認知症専門棟があり、専門的な認知症ケアを受けられる |
有料老人ホーム | 生活の場としての機能は特別養護老人ホームと共通 介護保険外のサービスを提供することもあり、費用が割高になる場合がある |
グループホーム | 認知症の方しか入居できない施設だが、その分専門的な認知症ケアを受けられる 少人数での共同生活を送る施設の特性上、アットホームな空間で過ごせる |
ショートステイ専門施設 | 老人保健施設や特別養護老人ホームのように施設へ併設されておらず、単独で運営している 小規模であるため利用者に合わせてきめの細かいサービス提供が可能 |
認知症の方がショートステイを利用する際のポイントや注意点
ショートステイを利用して認知症が進むのを心配されている方は、以下のポイントや注意点を知っておくとよいでしょう。ぜひ参考にしてください。
はじめは利用期間を短くする
ショートステイは1日から最長30日まで利用できます。
とはいえ、先述した通り認知症の方は環境の変化に順応しにくい特徴があります。
そのため、いきなり長期間利用してしまうと強い混乱状態になってしまうかもしれません。
まずは2〜3日程度の利用からはじめ、様子を見つつ1週間程度まで徐々に日数を増やしていくことをおすすめします。
環境や物品を自宅にあわせる
可能な範囲で、自宅に近い環境を整備するとよいでしょう。
住み慣れた環境に近い方が安心できるからです。
たとえばベッドとキャビネットの位置関係に気をつかったり、いつも好んで読む本や大切にしているもの、ふだん使っているものなどを持参させるとよいでしょう。
不安にならない環境を準備しておくことで、穏やかに過ごせる可能性が高くなります。
情報提供しておく
家族からショートステイ先に情報提供しておきましょう。
日課にしていること、趣味、好きな活動や歌、体調や持病に関すること、どのような時に落ち着きがなくなるのかなどが大切な情報です。
施設は介護のプロが多く在籍しています。認知症の方の情報を細かく伝えておけば、ケアに大いに役立ててくれるでしょう。
認知症の方がショートステイを利用する手順
認知症の方がショートステイを利用する際の手順について解説します。
【ステップ1】要介護認定を受ける
ショートステイは介護保険のサービスであるため、利用するには要介護認定を受けなければなりません。
まずはお住まいの市区町村の窓口(介護保険課や高齢福祉課などの名称)で介護認定を受けたい旨を伝えてください。
その後、市区町村からの認定調査を受けたり、かかりつけ医から主治医意見書を記載してもらったりします。
認定調査が終わると「一次判定」として暫定の介護度が決まり、その後「介護認定審査会」を経て「二次判定」で要介護度が確定するという流れです。
【ステップ2】ケアマネジャーに相談する
要介護認定を受けると担当のケアマネジャーがつきますので、ショートステイを利用したい旨を相談しましょう。
ショートステイの目的・期間・時期などの情報を伝えてください。
情報をもとに、ケアマネジャーが空いているショートステイ先を探してくれます。
【ステップ3】ケアプランを作ってもらう
ショートステイ先が決まれば、居宅サービス計画(ケアプラン)をケアマネジャーが作成します。
ケアプランには、ショートステイを利用する目的や、支援内容が記載されます。
作成にあたり認知症の症状についての情報や、どのような生活を送りたいかを詳しく伝えておくと、認知症の方と家族にとってよりよいケアプランを作ってもらえるでしょう。
ショートステイは認知症の方と家族を支えるサービス
本記事ではショートステイを利用すると認知症が進むかどうかについて解説しました。
結論として、ご本人の状態や支援する職員の技量や専門性にもよるため、一概に進む・進まないを決めることは難しいといえます。
大切なのは、認知症の方の症状やおかれている状況を理解してもらい、混乱しないように寄り添った対応をしてもらうことです。
専門的な知識や技術をもった職員が多く在籍しているかどうかを知りたい場合は、近隣の施設やサービスに詳しい担当のケアマネジャーに問い合わせるとよいでしょう。
ショートステイは認知症の方が地域でいきいきと自分らしく暮らすため、また家族の介護負担を軽減させるための重要なサービスです。
認知症介護でお困りの方は、ぜひ有効にご活用ください。