認知症でもショートステイは大丈夫?不安な理由やサービス内容を解説
「親が認知症だけど、ショートステイを利用しても大丈夫だろうか」
「認知症の人に対してショートステイではどんな対応をしてくれるのだろう」
このようにお悩みの介護者もおられるでしょう。
ショートステイは「急な用事ができて家を空けたい」「介護に疲れたので少し休みたい」などの理由で利用でき、介護者にとっても必要性の高いサービスです。
しかし、利用を嫌がったり施設に迷惑をかけたりすることを心配して、利用に踏み切れない介護者もおられます。
そこで本記事では、介護者が抱く不安を解消できるよう、ショートステイのサービス内容や安心して利用できるコツについて解説します。
認知症と向き合いながらも、適度な休息と安心を手に入れられるよう、ぜひ本記事を読み進めてください。
認知症でも大丈夫?ショートステイの利用に関する不安
認知症の方にショートステイを利用してもらいたいと思っていても、不安を抱く介護者は少なくありません。
以下では、よくある不安について紹介します。それぞれ見ていきましょう。
ショートステイを嫌がるかもしれない
利用者さんが、ショートステイに行くのを嫌がるケースです。
嫌がる理由には以下のものがあります。
- ご本人がショートステイの必要性を感じていないから
- 慣れた家にいる方がいいから
- 集団生活が嫌いであるから
そもそもご本人がなぜショートステイを利用するのか、その必要性を感じていないため、利用する気にならない場合があります。
ほかにも、慣れた家で自分のペースを大切にして生活する方が気持ちも楽なため、ショートステイを嫌がることがあるでしょう。
また、人との関わりをあまり好まず、集団生活を避けたいと思っている方もおられます。
これらの理由によって、ショートステイの利用を嫌がるのではないかと、介護者は不安になってしまうことがあるのです。
途中で帰りたがるかもしれない
見当識障害(場所や時間がわからない状態)や状況理解の低下(今自分がおかれている状況が把握できない状態)といった認知症の症状がある方は、利用中に帰りたがるかもしれません。
知らない場所であったり、どうしてここにいるのかわからなかったりといった不安や混乱から、落ち着きをなくし施設内を徘徊してしまうことがあります。
「私はいつ帰れるの?」「出口はどこ?」などと言って困っているかもしれない姿を想像すると、介護者は大切な家族にショートステイを利用させることをためらってしまいます。
施設の手におえないかもしれない
認知症の症状によって他者への暴言や暴力などがあり「施設の職員が手を焼いてしまうかもしれない」と不安になる介護者もおられます。
- たたく・ける
- 他の利用者さんと口論になる
- 物を壊してしまう
上記のようなことをしてしまったら「すぐに施設から退所させられてしまうかもしれない」と心配し、利用手続きに踏み切れないことがあります。
認知症が進んでしまうかもしれない
慣れない場所で生活するため、認知症の方の心身に過度な負担がかかり「症状が進んでしまうのではないか」という漠然とした不安を抱える介護者もおられます。
認知症が進んでしまうと介護がより大変になり、介護者の心身の負担が大きくなってしまうかもしれません。
認知症に対するショートステイのサービス内容
認知症の方を介護するご家族は、先述したような多くの不安を抱えていることでしょう。
しかし、結論からいうと心配はいりません。認知症でもショートステイの利用は大丈夫です。
理由は、専門スタッフが認知症に特化したケアを提供してくれるからです。
以下で認知症に対するショートステイのサービス内容を紹介します。
なじみのある動作を活かした活動を提供する
ショートステイでは、趣味や得意なことを活かした活動を提供し、認知症の方が意欲的に過ごせるためのケアを提供します。
具体的には、野菜を切る、洗濯物をたたむなどの体で覚えていることや、昔からなじみのある動作を取り入れた活動を提供することです。
認知症の方は、数分前のできごとや過去の思い出などを忘れてしまうことがあります。
しかし、過去に習得した技術に関する記憶(体で覚えたもの)は失われにくいと言われています。
そのため、なじみのある動作は認知症になる以前と大きな変わりなく行える方が多いのです。
そういった動作を日々の活動に取り入れていくと、脳が活発に働いて意欲的になったり、落ち着いて過ごせるようになったりする効果があります。
他者との交流を促し精神面の安定や居場所の獲得を目指す
認知症になると、自宅にこもりきりになってしまうことも珍しくありません。
ショートステイでは集団の中で他者との交流を促し、対人コミュニケーションの機会を提供するため、精神面の安定や居場所の獲得が期待できます。
記憶障害によって経験したことを忘れてしまう方でも「楽しい」「怖い」「嬉しい」などの感情が関わるできごとは、比較的記憶に定着しやすいといわれています。
認知症の方にとっての心地よい経験は、ポジティブな記憶を定着させるためにとても大切なことです。
24時間体制で見守りや介助をする
ショートステイでは認知症の専門知識をもったスタッフが24時間体制で見守りや身のまわりの介助をしてくれるため、落ち着きなく歩き回ってしまう方でも、安心して過ごせます。
持病があって医療的な管理やケアが必要な方でも、服薬や栄養管理をしてもらえるため、体調も安定しやすいでしょう。
また、他者との関係性をつくるのがむずかしい方でも、スタッフが間に入って関係性を取り持ってくれます。
そのため、他者トラブルを未然に回避することもできるでしょう。
ショートステイの利用に関して介護者が不安を抱くことは多いものの、専門的知識や技術をもったスタッフがていねいに対応してくれるため、安心して利用できます。
安心してショートステイを利用するコツ
認知症の方はもちろん、ショートステイを依頼する介護者にとっても安心してショートステイを利用するためのコツを解説します。
家族以外の第三者に説得してもらう
まずは認知症であるご本人に、ショートステイ利用の理由を説明することです。
「どうして家にいたいのに泊まりにいかなければならないのか?」と反発されることが多々あると思います。
ご家族が説得しても首を縦に振らないこともありますので、第三者の協力をあおぎましょう。
具体的には、担当のケアマネジャーやかかりつけ医、ショートステイ先の職員などから話してもらうと意外にすんなりと納得してくれる場合があります。
はじめはお試しで日数を短めに
ショートステイは短期間の入所とはいえ、認知症の方がいきなり1週間も知らないところに泊まるのは心身に大きな負担がかかります。
そのため、まずは2~3日程度の短い期間でお試し利用してみましょう。
一度利用して施設やケアマネジャーと情報共有しておけば、次は4~5日、1週間と日数を増やしても大丈夫かどうかの判断ができるようになります。
認知症ケアに慣れた施設を選ぶ
ショートステイは認知症の方でも基本的に受け入れ可能ではあるものの、より認知症ケアに強い施設を選んでおくと安心です。
まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、主治医などに相談し、施設の候補を洗い出しておきましょう。
ショートステイは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームや有料老人ホームなどさまざまな施設で利用できます。
それぞれ特徴が異なるため、ご本人の認知症の症状に応じて利用する施設を選ぶようにしましょう。
認知症でもショートステイは大丈夫
認知症の方がショートステイを利用する際、介護者は「預けて大丈夫かな」と不安になることが多々あるでしょう。
しかし、ショートステイは介護や認知症に関する専門的な知識や技術をもったスタッフが在籍しています。
過度に心配せず安心して任せてみましょう。
「一度お試しで利用してみる」くらいの軽い気持ちで大丈夫です。