デイサービスの人材不足を解消する方法を解説!具体例も紹介
「デイサービスの介護人材が不足して困っている」
「人材不足を解消する方法を知りたい」
介護業界全体で介護人材の不足が問題視されています。人材不足に悩むデイサービス経営者も多いのではないでしょうか。今回は、介護業界の人材不足に関する現状を踏まえつつ、デイサービスで実践できる人材不足解消法を解説します。この記事を読むことで、デイサービスでの人材不足問題を解決するヒントが得られるでしょう。ぜひ、最後までお読みください。
介護業界における人材不足の現状
介護業界において介護人材の不足が問題となっています。特に団塊の世代が75歳以降になる2025年以降、介護職員不足が深刻化すると予測されています。介護業界における人材不足の現状について解説します。
約32万人の介護職員が不足する
厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」において、2023年には約22万人、2025年には32万人の介護職員が不足するというデータが出されました。
予測される介護人材不足に対して、国は介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、外国人材の受入環境整備などの介護人材確保対策を実施しています。
しかし、日本全体の人口動態からも労働人口が減ることは避けられません。将来的に深刻な介護人材不足が発生する可能性は高いでしょう。
参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
3年以内に6割が離職する
介護職員の定着率が低いことも問題です。公益財団法人 介護労働安定センターの「令和3年度 介護労働実態調査」によると、職員の平均勤続年数は6.8年という結果でした。さらに、入職した人の58.7%が3年未満で退職する、というデータも出されています。
以上のデータから、約6割の人は3年未満で退職する可能性が高く、多くの人は6.8年以上勤務せずに辞めてしまう可能性が高いといえるでしょう。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」
約6割の施設が人材不足を感じている
公益財団法人 介護労働安定センターが実施した「令和3年度 介護労働実態調査」によると、約6割の施設で人員不足を感じているようです。現在、短期間で離職する介護職員が多く、半数以上の施設で介護職員の不足を感じている現状であることがわかります。
将来的に約32万人の介護職員が不足することからも、早期に介護職員の確保に向けた対策を立てる必要があるでしょう。しかし、日本の人口動態など、1事業所の努力だけでは変えられない問題もあることは理解しておきましょう。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」
デイサービスで人材が不足する理由
デイサービスで介護人材が不足する理由として、人間関係に悩む職員が多い、賃金が低い、採用が困難という3つの問題が挙げられます。各問題について解説します。
人間関係で離職する職員が多い
介護労働安定センターの「令和3年度 介護労働実態調査」によると、前職を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があったため」と回答した人が 18.8%で最多でした。 次に「結婚・出産・妊娠・育児のため」「自分の将来の見込みが立たなかったため」という回答が続きます。以上のデータから、人間関係を原因に離職する介護職員が多いこともデイサービスの人員が不足する要因のひとつといえるでしょう。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」
賃金が低い
介護労働安定センターの「令和3年度 介護労働実態調査」の前職をやめた理由として、性別ごとに解答を確認すると男性は「自分の将来の見込みが立たなかったため」が 26.5%で最も高くなっていました。
このデータから、賃金に関して将来の見込みが立たない、と感じる男性の回答割合が高い傾向が確認できます。介護施設の中でもデイサービスで働く介護職員は夜勤がないので、賃金が安くなる傾向があります。賃金の安さを原因に離職する介護職員も多いでしょう。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」
採用が困難
現在、介護人材の採用が非常に困難な状態といえます。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)」によると、介護サービスの職業の有効求人倍率は4.01倍で前年同月比で+0.19倍でした。つまり、1人の介護職員を4つの施設で取り合っている状況です。
また、厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」における令和2年と令和3年のデータを比較すると、介護老人保健施設と介護療養型医療施設以外の全ての介護施設数が増加していることがわかります。
以上の2つのデータから、現状すでに介護職員を獲得しにくい状況であるにも関わらず、介護施設が増加し続けている、といえるでしょう。今後さらに職員の採用が困難になる可能性もあります。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)」
参考:厚生労働省「令和3年度 介護サービス施設・事業所調査」
デイサービスの人材不足を解消する4つの方法
デイサービスの人材不足を解消する対策として、離職防止対策と雇用対策という2つの視点を持つ必要があります。そのなかでも、労働環境を整える、外国人労働者を受け入れる、賃金を上げるという3つの方法が有効です。それぞれ解説します。
労働環境を整える
デイサービスの労働環境を整えると介護職員の離職防止効果があります。具体的には以下のような労働環境を整えるとよいでしょう。
- 新入職員の教育システムを確立する
- 組織体系を明確にする
- ICTを活用して業務効率化を図る
- 残業時間を無くす
- 定期的に研修を実施する
新入職員に対して、OJTだけで教育しているデイサービスも多いのではないでしょうか。しかし、OJTだけで指導した職員が現場で働き始めると「指導者によって新入職員のスキルにバラつきが発生して現場が混乱する」といった状況になる可能性もあります。
現場の職員が協力しやすくするためにも、教育システムを明確に確立して新入職員のスキルを底上げしなければいけません。また、ICT等を導入して業務効率化する、残業時間を無くす、といった方法で職員の業務負担を軽減する方法も有効です。
外国人労働者を受け入れる
日本人の人口動態は変えられないため、外国人労働者を受け入れてもよいでしょう。将来的に労働者人口が減る問題に関しては、デイサービスの取り組みだけで解決できる問題ではありません。
政府も介護現場での外国人労働者受け入れを後押しする政策をすすめています。積極的に活用してみるのもよいでしょう。しかし、外国人労働者を受け入れている施設は少なく、利用者さんにどのように受け取られるかわかりません。
今後、外国人労働者を受け入れようと考えている方は、行政に相談しながら慎重に検討しましょう。
賃金を上げる
デイサービスの経営状況に余裕があれば、職員の賃金を上げる方法も人材不足を解消する対策のひとつです。しかし、賃金を上げるためには財源を確保しなければいけません。財源を確保する方法として、処遇改善加算を算定する方法もおすすめです。
処遇改善加算と特定処遇改善加算を算定するだけで、売上の最大20%程度まで処遇改善に使える財源を確保できます。まだ算定していない事業所は、処遇改善加算と特定処遇改善加算を算定してみてもよいでしょう。
まとめ
今回は、デイサービスの人材不足を解消する方法について解説しました。現在、約6割の介護施設で人材不足を実感しており、将来的に約32万人の介護人材が不足するとされています。介護職員の約6割が3年以内に離職する現状からも、デイサービスで積極的に人材確保策を立てる必要性は高いでしょう。
デイサービスの人材不足を解消する方法として、労働環境を整える、外国人労働者を受け入れる、賃金を上げるという3つの方法が有効です。人材不足を解消したい事業所は、積極的に実践しましょう。