リハビリデイサービス開業に必要な知識と注意点について解説
「リハビリデイサービスを開業する方法を知りたい」
「リハビリデイサービスの開業を成功させるポイントを知りたい」
これからリハビリデイサービスを開業する方は、このような悩みを持っているのではないでしょうか。この記事では、リハビリデイサービスを開業する際に必要な知識と開業する際の注意点について解説します。今回は、過去に2回リハビリデイサービスを開業した筆者の経験をもとに執筆しました。この記事を読むことで、より実践的な知識が身に付くでしょう。
リハビリデイサービスとは
リハビリデイサービスは、機能訓練に特化したデイサービスです。リハビリデイサービスという正式な分類が存在するのではなく、一般的に機能訓練指導員を配置して機能訓練に特化したデイサービスを指しています。一般的なデイサービスについて、厚生労働省のWebサイトには以下のように記載されています。
『通所介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。』
引用)厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの?-通所介護」
一般的なデイサービスの役割としては、在宅生活を支援する役割が主な目的です。リハビリデイサービスでは、心身機能と生活機能の向上を目的とした機能訓練をメインに行うことで、在宅生活を支援している特徴があります。
リハビリデイサービスの目的
リハビリデイサービスの目的は、障がいを抱えた高齢者の生活の質を向上させることです。
リハビリデイサービスでは、利用者さんの生活の質を向上させるため、科学的根拠に基づいた機能訓練サービスを提供します。地域に住む高齢者に対するリハビリテーションは、身体機能を向上させるだけでなく、生活機能の向上や社会参加の促進を最終的な目標に設定しなければいけません。
リハビリデイサービスの機能訓練指導員は、個別のニーズに合わせたプログラムを提供し、患者の能力や目標に応じた支援を行います。
リハビリデイサービスは需要がある
リハビリデイサービスは、地域に住む高齢者から高い需要がある施設です。
厚生労働省の資料「今後の高齢者人口の見通しについて」によると、2025年には全人口の30.3%が65歳以上高齢者となる見込みで、2055年には39.4%を占める予測が公表されています。
将来的に、全人口の約40%が高齢者とされる時代では、高齢者の健康に対する意識も向上するでしょう。地域に住む高齢者が気軽に通えて、専門的なリハビリを受けられるリハビリデイサービスは、今後も高い需要が見込まれます。
リハビリデイサービス開業に必要な条件
リハビリデイサービスを開業するためには、人員基準と設備基準を満たしたうえで、自治体から通所介護施設として指定を受けなければいけません。リハビリデイサービスを開業するために必要な人員配置基準と設備基準について解説します。
リハビリデイサービスの人員配置基準
デイサービスの利用定員に応じた人員を配置する必要があります。必要な人員は、管理者、生活相談員、介護職員、看護師、機能訓練指導員です。デイサービスの人員基準は以下をご参照ください。
人員 | 配置基準 |
---|---|
管理者 | 兼業可、1施設1人配置 |
生活相談員 | サービス提供時間中は専従1名以上 |
介護職員 | 利用者15名以下は1名以上。16名以上なら「(利用者数-15)÷5+1」名以上配置 |
看護師 | 基本は専従1名以上。ただし、常に連携できる状態なら配置されているものとする。 |
機能訓練指導員 | 個別機能訓練加算算定の有無に関わらず1名以上配置。 |
リハビリデイサービスの設備基準
リハビリデイサービスを開業するためには、設備基準を満たす必要があります。介護給付費分科会の資料を参考に、デイサービスで満たすべき設備基準を以下の表に示します。
食堂、機能訓練を行う場所 | 必要な面積を有するもの。合計した面積が利用定員×3㎡以上 |
相談室 | 相談の内容が漏えいしないように工夫されている空間 |
厚生労働省の資料には上記の記載がされていますが、実際に設備基準の審査に施設に訪れるのは、都道府県や市区町村の職員です。現場では、各自治体の指示に従って設備を整えなければいけません。
場合によっては、上記の設備以外に事務室や静養室、浴室が必要になるケースもあります。詳細な基準は各自治体のWebサイトを確認しましょう。
リハビリデイサービス開業に必要な資金
リハビリデイサービスの開業費用は、事業所ごとに大きく異なります。特に、物件の改修費によって必要資金が大きく変動するでしょう。賃貸でリハビリデイサービスを始める場合の一般的な相場を以下に記載します。
- 【物件の初期費用】100万円〜300万円
- 【内装工事費用】200万円以上
- 【人材確保】50万円〜100万円
- 【備品購入】200万円〜300万円
- 【車両費】200万円〜400万円
- 【運転資金】6ヶ月〜1年分
リハビリデイサービスの場合、訓練に必要な医療機器や物理療法機器などを購入しなければいけません。そのため、一般的なデイサービスと比較して備品購入費が大きくなる傾向があります。また、医療メーカーによっても価格帯が異なるため、購入機材が高ければ高いほど開業資金が大きくなることも覚えておきましょう。
リハビリデイサービスを立ち上げる手順
デイサービス立ち上げに必要な手順は、以下の10ステップです。
- デイサービス事業の方向性を決める
- 物件を決める
- 設計建築・内装工事の準備
- 事業計画書を作成する
- 法人の設立
- 指定機関(都道府県や市区町村)と事前協議
- スタッフを募集する
- 通所介護事業者の指定申請
- 開業前の環境作り
- 開業
実際に準備を進めていくと複数の手順を同時進行する場合もありますが、基本的には上記の手順で進めていくことをイメージしておきましょう。
リハビリデイサービスを開業する際の注意点
リハビリデイサービスを開業する際に注意すべき点として、報酬が2ヶ月遅れで入ってくることや、機能訓練指導員の確保について注意する必要があります。各注意点について解説します。
報酬は2ヶ月遅れで入ってくる
介護保険制度の仕組み上、介護報酬の保険給付は2ヶ月遅れで入金されます。そのため、開業当初の資金繰りは計画的に行わなければいけません。
一般的に、リハビリデイサービスの経費として最も大きな割合を占めているのは職員の人件費です。1ヶ月分の人件費を支払うのは翌月になるため、保険給付のタイミングでは間に合いません。また、開業当初は利用者が集まるまでに数ヶ月は必要でしょう。
リハビリデイサービスを開業する際には、利用者さんが集まるタイミングと人件費とのタイムラグを計算して、多めに運転資金を用意することをおすすめします。
機能訓練指導員の確保
リハビリデイサービスとして開業する場合、リハビリ専門職を機能訓練指導員として配置し、個別機能訓練加算を算定するのが一般的です。
機能訓練指導員が在籍しておらず、個別機能訓練加算も算定していないデイサービスは、リハビリデイサービスとして認知してもらうことも難しいでしょう。
リハビリデイサービスとして開業する場合、機能訓練指導員の確保が必須になります。よい機能訓練指導員が在籍している施設は、利用者満足度も向上します。リハビリデイサービスにとって、機能訓練指導員の確保は重要な課題のひとつです。
まとめ
この記事ではリハビリデイサービスの開業方法に必要な知識について解説しました。
リハビリデイサービスは、一般的なデイサービスよりも機能訓練を重視しているデイサービスです。将来的にリハビリニーズの高い高齢者が増加することが予測されるため、リハビリデイサービスは今後も高い需要が見込まれます。
リハビリデイサービスを開業する際には、人員配置基準や設備基準に注意して手続きを進めましょう。機能訓練指導員を確保することが、リハビリデイサービスを開業する際の重要なポイントです。