デイサービス稼働率の全国平均はどのくらい?調査資料から徹底分析
「デイサービスの稼働率ってどれくらいがいいの?」
「全国のデイサービス稼働率を知りたい」
デイサービス経営者であれば、一度は気になったことがあるのではないでしょうか?デイサービス稼働率の全国平均を知れば、事業所の経営状況を把握しやすいでしょう。高い稼働率を維持し続けることが、デイサービス経営を安定させるポイントの一つです。
今回は、デイサービス稼働率の全国平均を紹介し、稼働率を上げる方法も解説します。
デイサービスの稼働率が経営状況を左右する
福祉医療機構の資料「通所介護事業所の経営状況について」によると、赤字事業所と黒字事業所の稼働率に明確な差があると指摘されています。データによると赤字事業所の稼働率は64.9%、黒字事業所の稼働率は74.2%であり、2種類の事業所の稼働率には9.3%も差がありました。
また、同データによると、赤字事業所の方が黒字事業所よりも多くの人員を配置していることもわかります。赤字事業所では利用者10人あたりの従業員数が6.06人、黒字事業所では5.19人でした。赤字事業所の方が0.87人多く配置されており、人件費率も16.6%も高かったとのことです。
このデータから、稼働率の増減はデイサービスの経営状況に大きく影響を与えているといえるでしょう。
指標 | 単位 | 黒字事業所 | 赤字事業所 | 差(黒字-赤字) |
---|---|---|---|---|
利用率 | % | 74.2 | 64.9 | 9.3 |
利用者10人当たり従事者数 | 人 | 5.19 | 6.06 | △0.87 |
うち介護職員 | 人 | 2.81 | 3.22 | △0.41 |
人件費率 | % | 61.3 | 77.9 | △16.6 |
引用)福祉医療機構「2021年度(令和3年度)通所介護経営状況について」
年度別のデイサービス全国平均稼働率の推移
デイサービスの平均稼働率は徐々に減少傾向にあるようです。福祉医療機構「通所介護事業所の経営状況について」のデータによると、2017年から2021年の5年間で徐々に平均稼働率が低下していることがわかります。5年間で2.6%のマイナスですが、ほぼ70%付近であることがわかります。
また、逆に人件費率は5年間で5%増加しており、稼働率の低下と人件費率の増加によって赤字事業所の割合も15.3%増加しています。同資料によると、稼働率の低下、人件費率の増加によって経営状態が悪化する事業所が増えている可能性も指摘されています。
指標 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 5か年度の差 |
---|---|---|---|---|---|---|
利用率 | 70.9% | 72.0% | 72.3% | 68.7% | 68.3% | △2.6% |
人件費率 | 66.0% | 66.9% | 67.2% | 69.2% | 70.9 | 5.0% |
赤字事業所割合 | 33.6% | 36.0% | 36.5% | 40.8% | 49.0% | 15.3% |
引用)福祉医療機構「2021年度(令和3年度)通所介護経営状況について」
デイサービス規模ごとの稼働率全国平均
デイサービス規模ごとでは、通常規模型の稼働率が1番低いようです。福祉医療機構「通所介護事業所の経営状況について」では、以下のようなデータが出されていました。
指標 | 地域密着型 | 通常規模型 | 大規模型(Ⅰ) | 大規模型(Ⅱ) |
---|---|---|---|---|
利用率 | 73.5% | 68.4% | 74.7% | 74.7% |
全体的に7割以上を超えていますが、通常規模型のみ68.4%という低い数値です。同資料によると、通常規模型は他施設と併設していることが多いからではないか、と分析されています。大規模型と比較しても約6%も差があります。全国平均は約7割程度と考え、稼働率が7割以下になると経営状況の改善が必要になるといえるでしょう。
引用)福祉医療機構「2021年度(令和3年度)通所介護経営状況について」
デイサービスの稼働率を上げる方法
デイサービスの稼働率を上げるためには、複数の方法を同時に行っていく必要があります。稼働率を上げるための対策を紹介します。
利用者1人あたりの利用頻度を上げる
稼働率は1日にくる利用者さんの延人数で計算されます。例えば、100人の利用者さんが週1回利用する場合と、50人の利用者さんが週2回利用する場合、述べ利用者数は同じになります。
デイサービスの稼働率を上げるためには、利用者さん1人当たりの利用回数を計測しておくとよいでしょう。1週間の利用回数が少ない利用者さんが多いのであれば、1週間の利用回数を増やすように働きかける方法もあります。
しかし、無理に利用回数を増やそうとすると、ケアマネージャーや家族からの信頼を失う可能性もあるので、方法については慎重に検討しましょう。
利用者さんの欠席回数を減らす
利用者一人当たりの利用頻度を上げるのと同様に、利用者さんが休む回数を減らす方法もおすすめです。
ちょっとした体調不良や私用で休んだ際に、別な曜日に振替利用するようにお声かけしましょう。また、長期間休んでいる人にも定期的に電話をしたり、自宅へ様子見に行ったり、といった方法も効果的です。
長期間休んだ利用者さんは、再度利用することに戸惑う人もいます。職員が直接会話することで、再度利用に繋がりやすいでしょう。
利用者さんの満足度を上げる
利用者さんが来週も行きたい、と思ってもらえるサービスを提供することも重要です。利用者さんの満足度が低ければ、新しい利用者さんが来られたとしても、すぐに利用停止になる可能性があるでしょう。
満足度の高いデイサービスは、利用者が休まず利用されるので稼働率も上昇します。また、利用者さんがお知り合いに紹介して、新規利用者の獲得にも繋がる可能性も高まります。
デイサービス稼働率の全国平均は参考程度に
デイサービスの経営状況を示す数値は稼働率だけではありません。損益分岐点や延べ利用者数などの数値も確認しておきましょう。
稼働率の全国平均が70%程度だったからといって、稼働率70%以下のデイサービスは全て経営状況が悪いわけではありません。逆に全国平均以上だったとしても、必要以上に経費が必要な事業所は赤字になる可能性もあります。
稼働率はあくまでも判断基準の一つです。総合的にデイサービスの経営状況を判断できるようにしましょう。
全国平均以上の稼働率をキープできるデイサービスを目指す
福祉医療機構の資料でも指摘されている通り、デイサービス稼働率の低下が経営状況の悪化に影響を与える可能性は高いでしょう。
デイサービス稼働率の全国平均は約70%程度です。稼働率の全国平均値をひとつの目標として設定するのもよいでしょう。しかし、全国平均以上の稼働率を確保できたとしても、人件費が高すぎる、利用停止となる利用者が多すぎる、といった要因で経営状況が悪化する可能性はあります。
稼働率を上げつつ、他の数値も確認して経営状況を総合的に判断できるようにしましょう。