デイサービス経営の基礎知識「損益分岐点」について解説
「損益分岐点ってなに?」
「デイサービスにおける損益分岐点の考え方は?」
このような疑問を持っている経営者も多いのではないでしょうか。デイサービスを運営していくうえで損益分岐点は重要な指標です。今回は、デイサービスにおける損益分岐点について解説します。この記事を読むことで損益分岐点を確認しながらデイサービスの運営方針をチェックできるようになるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
デイサービスの損益分岐点とは
デイサービスを運営するには、利益を出さなければいけません。何人利用者が利用すれば黒字化するのか、逆に赤字経営になってしまうラインはどこなのか、明確に数値目標を立てておく必要があるでしょう。
損益分岐点とは、売り上げが費用を上回るラインのことです。損益分岐点を下回る売り上げだった場合、損益は0円になります。
損益分岐点を知らずにデイサービスを運営するのは、到着地点を決めずに走っているマラソンのようなものです。デイサービスの経営者は常に損益分岐点を意識しながら運営しましょう。
デイサービスで損益分岐点を考える際に重要な数値
損益分岐点を考える際は、売上高と経費を使って計算します。デイサービスの運営に必要な経費は、「固定費」と「変動費」の2種類に分けて考えるとよいでしょう。固定費と変動費について解説します。
固定費
固定費とは、売り上げと関係なく発生する費用です。デイサービスの場合は、以下のような費用が該当します。
- 家賃
- リース費用
- 広告宣伝費
- 通信費
固定費は売り上げに関係なく発生する費用であり、運営していく上で必要な経費です。変動費と比較すると経費に占める割合が小さいでしょう。契約する会社や利用するサービスの種類によって費用が変わる特徴もあります。
変動費
変動費は売上高が上昇するのと比例して増大する経費です。デイサービスの場合は以下のような費用が該当します。
- 人件費
- 水道光熱費
- ガソリン代
- 消耗品費
デイサービスの利用者数を増やす場合、利用者数に見合った人員を配置しなければいけません。また、利用者が増加すると、必要な送迎車が増加する、トイレットペーパーなどの消耗品も必要になる、といった状況になるでしょう。
特に人件費はデイサービス運営に必要な経費のうち大きな割合を占めており、削減したくても簡単に削減できない特徴もあります。変動費のなかでも人件費は常に意識しておきましょう。
経費を固定費と変動費に分ける理由
経費を「固定費」と「変動費」に分けることで、経費を見直す際の判断基準になります。
例えば、売上高が低下して経費を削減しようと考えた際に、変動費を大きく削りすぎてしまうと比例するように売り上げが低下します。デイサービスの場合、大幅に人件費を削ると今まで通りの業務が遂行できなくなり、さらに利用者が辞めてしまうことになりかねません。
売上高が下がった場合は、まず固定費を見直し、慎重に変動費を見直すとよいでしょう。「固定費」と「変動費」に分けることで、経費の全体像を掴みやすくなります。
デイサービスにおける損益分岐点売上高の計算方法
損益分岐点とは、売上高と経費を計算すると損益が0になる数値のことで、計算式は以下のとおりになります。
損益分岐点=売上高-費用(固定費+変動費)=0
この損益分岐点を超える売上高のことを「損益分岐点売上高」と言います。損益分岐点売上高の計算式は以下のとおりになります。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益比率(1-変動費÷売上高)
例えば、売上高500万円、固定費100万円、変動費200万円の場合、損益分岐点売上高は以下のように計算できるでしょう。
100万円÷(1-200万円÷500万円)=約166万円
この場合、約166万円以上の売り上げがなければ赤字になってしまうことがわかります。ぜひ、自事業所の損益分岐点売上高を計算し、デイサービス運営に役立てましょう。
デイサービスでの損益分岐点の活用方法
損益分岐点を知っているだけでは意味がありません。損益分岐点に関わる数値を把握することで、デイサービスの運営方針を決めやすくなるでしょう。デイサービス運営に活用する方法について解説します。
損益分岐点比率
損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高に対する売上高の比率を指します。損益分岐点比率が低いほど損益分岐点よりも売上高が大幅に上回っていることを指しており、安定して運営できている状態といえるでしょう。損益分岐点比率は以下の式で計算できます。
損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100
損益分岐点比率が1以上になると、赤字の状態です。1に近づいてきているのであれば、デイサービスの運営方法を検討した方が良いでしょう。
安全余裕率
安全余裕率は実際の売上高と損益分岐点の差を示しています。比率が高いほど損益分岐点に対する売上高が大きく、安定して運営できている状態といえるでしょう。安全余裕率の計算式は以下のとおりです。
安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100
損益分岐点売上高と比較してどれくらい余裕があるかを示します。例えば、実際の売上高が500万円、損益分岐点売上高300万円だった場合、安全余裕率は40%となります。安全余裕率が0%以下になると赤字なので、0%に近づいているのであれば何らかの対策を立てた方がよいでしょう。
デイサービスの損益分岐点を下げる方法
安定してデイサービスを運営するには損益分岐点を下げる必要があります。損益分岐点を下げるには、「売上高を上げる」か「経費を削減する」の2択しかありません。デイサービスの損益分岐点を下げる方法について解説します。
加算を取得する
取得できる加算を増やすことで、デイサービスの売上高を上げてもよいでしょう。今揃っている人員、施設環境で算定できる加算がないか探してみましょう。
人件費を増加させることなく売上高が向上するので、加算を取得する方法はおすすめです。ただし、デイサービスの環境によっては、取得できる加算が限られている場合もあるので注意しましょう。
人件費を削減する
デイサービスの経費のなかでも大きな割合を占めているのが「人件費」です。可能な範囲で削減できる人件費がないか検討してもよいでしょう。
例えば、ミーティングを短時間で終わらせることで残業代を削減できます。ただし、無理に人件費を削減すると、スタッフのモチベーションも下がりかねません。適度に見直すようにしましょう。
利用者を増やす
デイサービスの売上高に直結するのが、利用者数の増減です。利用者さんが増えれば売り上げが増大し、利用者さんが減れば売り上げが下がります。
売り上げを上げるために、まずは利用者さんを集めましょう。地元のケアマネージャーさんへ挨拶回りをする、チラシを入れる、といった方法で利用者さんを集めるとよいでしょう。
常に損益分岐点を意識してデイサービスを運営する
今回はデイサービスにおける損益分岐点について解説しました。損益分岐点とは、売り上げが経費を上回るラインのことです。経費には「固定費」と「変動費」があります。それぞれの特徴を理解して対策を立てましょう。損益分岐点比率や安全余裕率を定期的に計算して経営状況を把握し、状況の変化に合わせて経営方針を見直すとよいでしょう。